外部空間における様々な「装置」の調査研究プロジェクト


by nagahama-lab

カテゴリ:外部空間装置|か行( 6 )

e0149288_18405420.jpg
世界で一番美しい広場。
そう呼ばれるのは、イタリア・トスカーナ地方のシエナという町にある「カンポ広場」である。昨年の初夏に休暇を利用して、車でローマからフィレンツェにかけて山岳都市を巡った際に訪れた町のひとつである。中世のたたずまいを今なお色濃く残すこの町は、金融都市として繁栄し、世界最古の銀行の本店やシエナ大聖堂などがその繁栄の証しとして現存している。
シエナの町は、地形的に3つの尾根筋が、ひとつの交点を中心として放射状に広がるかたちで広がっている。その交点となる位置にカンポ広場はある。有名な扇形をした広場の形や傾斜は、もともと尾根と尾根の狭間に作られた自然の地形を生かした広場であったことによるらしい。ともあれ、プブリコ宮殿(現市庁舎)とマンジャの塔に向かって、すり鉢状にゆるやかに傾斜する広場では、多くの人々が、腰を下ろしたり、寝そべったりしながら、思い思いのゆったりとした時間を過ごしている。その風景は、赤レンガ敷きの都市広場であるにもかかわらず、緑の丘の上で人々がくつろぐ風景を彷彿させる。それは、8本の白い大理石のラインによって強調されたすり鉢状の形態が、その場の人々を優しく包み込み、自然で穏やかな空間を作り出しているからだと思う。
目線を上げてみると、広場の周囲は、小さな柱のある美しい飾り窓の5~6階建ての建築群に取り囲まれている。その低層階には、バール、ピッツェリアなどの飲食店やお土産物などの商店が軒を連ねていて、広場に賑わいと活気を与えている。広場に張り出した大きなテントの下では、地元の人々や観光客が、名物のシナモンやチョコレートのお菓子とカプチーノを味わいながら、ゆったりと広場を眺めている。驚くことに、この広場では毎年夏に、「パリオ」と呼ばれる伝統行事、シエナの各地区対抗の競馬大会が開催される。赤レンガの広場に土を持ち込み、一時的な馬場を作り、中世の衣装をまとった騎手が競技を行う。当日の広場は超満員となり、熱狂と歓声に包まれる。まさに、この広場は、日常的にも非日常的にも「都市の劇場空間」となっているのである。
このイタリア旅行で興味深かったのは、イタリア人の町の使い方である。中世以来の伝統的な建物や広場を、ことさら後生大事にするのではなく、さりとて粗末に扱うわけでもなく、それらにきちんと敬意を払いながら、今の時代のスタイルを持って使いこなしている。現代的なデザインのイタリア車が、中世さながらの裏通りに停めてあっても違和感を覚えないことが印象的であった。彼らの中で、中世から現代に至るまで、生活に対するデザインが脈々と連続していて、一貫した感性を頑固なまでに持ち続けていることがそうさせているのだと思った。カンポ広場も、観光客にとっては歴史的な遺産であるが、しばらくその場所に身を置いていると、自分自身の暮らしの場のひとつのように思えてくる。その魅力こそが、「世界で一番美しい広場」と呼ばれる本当の理由のような気がした。(文と絵:澤木光次郎 OSOTO v.06 掲載)
[PR]
by nagahama-lab | 2009-11-11 18:42 | 外部空間装置|か行
e0149288_18245112.jpg
はじめて訪れた時から、とても居心地の良い場所だと思っていた。
その場所は、新宿副都心の超高層ビル街の真ん中にあって、新宿三井ビルディングの足元にある「55ひろば」という広場である。周囲の知人たちに、この広場のことを聞いてみても、その場所自体はよく知っているのだが、意外と名前が知られていないのをいつも不思議に思う。新宿三井ビルディングの方は、ハーフミラーと黒を基調とした外観が、超高層ビル街の中でも際立っているので、「三井ビル」という略称とともに皆が知っているのだが。ちょっと調べて見ると、「55ひろば」の名前は、三井ビルが55階建てであることから、そう名付けられたらしい。「GO!GO!HIROBA」だろうと、心の中でなんとなく思っていた自分がちょっと恥ずかしくなる。
 この広場が、まず良いのは、超高層ビル街の谷あいにありながら、そのことをまったく感じさせない都会のオアシスとなっていることである。昔、NYの摩天楼の中心地にある「ペイリーパーク」という小さな庭のような公園を訪れたことがある。そこも55ひろばと同じように、都会の喧騒から切り離れた居心地の良い場所となっていた。白いワイヤーチェアに腰かけた初老のおじいさんが、コーヒーを飲みながら、ゆったりとした雰囲気で新聞を読んでいるのを眼にした時、街の豊かさとはこういうことだと思った。
この2つの場所に共通しているのは、広場の突き当たりに「滝」があることである。滝の音が街の騒音をかき消しつつ、「ずっと眺めていられるもの」にもなっていて、「ずっと座っていることができる」という感覚を与えているように思う。特に、55ひろばの方は、道路のある地上階と広場のある地下階との段差を上手く利用してあって、その段差の壁面に、立体的な滝が、まるで屏風絵のように組み込まれているのがいい。
 もうひとつ、この広場が良いのは、イベント・ステージがあることだ。このステージでは、ビルのオフィス対抗カラオケ大会やブラスバンド演奏会などが毎年開催される。広場全体を利用したクリスマス・イベントやフリーマーケットなども開催されたりしている。日常的につかっている広場が、ある日突然、イベント会場に変化するのは、まるで神社の境内のお祭りのようで、通りすがりに見ているだけでも、なぜかワクワクしてしまう。55ひろばの周囲には、広場を取り囲むように、レストランやベーカリーショップなどのいい感じのお店が立ち並んでいる。天気の良い日には、ケヤキの木陰でテイクアウトを食べながら、広場に居座っている様々な面々を眺めてみる。携帯するOL、居眠するサラリーマン、化粧する女子高生、談笑するおばさんたち、キスするカップル、…観察する僕。みんなが、この広場の居心地の良さを感じているのだと思えた。
新宿副都心という、その昔、未来を夢みてつくられた街の中で生まれたその広場は、完成後、30年の歳月を経ても、色褪せるどころか、ずっとなくてはならない「都会のオアシス」としてあり続けているのだ。広場の名前をみんな知らなくても、その広場の普段の情景やイベントの風景は、みんなの記憶の中に、しっかりと刻み込まれているようである。(文と絵:澤木光次郎 OSOTO v.02 掲載)
[PR]
by nagahama-lab | 2009-11-11 18:27 | 外部空間装置|か行
e0149288_2342638.jpg
飲食店や喫茶店の店前の歩道沿いの席。国内では、健康増進法に伴って増えたようである。
[PR]
by nagahama-lab | 2008-11-10 23:04 | 外部空間装置|か行
e0149288_15441452.jpg
堤外地の普段水が流れていない平坦な土地。様々な人々が思い思いの場所に居る都市風景。
[PR]
by nagahama-lab | 2008-11-05 15:44 | 外部空間装置|か行
e0149288_2052299.jpg
神が降臨する「依り代」となる樹木。神も都市の過密化の影響を受ける時代である。
[PR]
by nagahama-lab | 2008-10-24 20:06 | 外部空間装置|か行
e0149288_22495354.jpg
ビーチを利用した結婚式場。自然信仰の南の島らしい風景に感じた。
[PR]
by nagahama-lab | 2008-10-18 23:03 | 外部空間装置|か行